Tizip 内部ストレージシステム

 

Tizip とは、ドイツのタイテックス社が開発した完全防水のジッパーを言います。
レインウェアなどに使用される止水ジッパーは極めて高い撥水性を持ちますが、高い水圧に耐えられるものではありません。一方 Tizip は単に水を通さないだけでは無く、空気すらも通しません。完璧な密閉性と、自由な開閉機構の両立を実現させる、画期的な製品です。

安定性向上の為に横幅を拡張させた " 高山流水 " " 山紫水明 " のスターンの内側には大きな空間があります。
スポーツモデルとしての運動性能を向上させる為にタイトフィットなコックピット設計の " 高山流水 " には荷物を積み込めるスペースが僅かしかありません。一方で多くの荷物を積むことを前提とした " 山紫水明 " には、少しでも多くの積載量が欲しくなります。
そこでスターンに Tizip を取り付け、この巨大な空間に内部ストレージを設ける事にしました!

 

.

Tizip 内部ストレージにはいくつかの大きなメリットがあります。
まず大きな利点となるのは、収納する荷物を完全にドライ保てる点。例えば電車やバスでアクセスする方の場合、バックパックがびちょびちょに濡れてしまうと帰宅時にちょっと困ります。
着替えやバックパック、帰宅時の靴、寝袋、マット、テント、食料など、濡れては困るものを完全にドライに保てるのは大きな利点です!

 


重心が下げられるのも、運動性能向上に大きく貢献します。パックラフトは積載スペースが少なく、基本的にはバウに荷物を固定する事になります。しかしこれだと重心が上がってしまい、特に激流のホワイトウォーターやうねりの強い海域では転覆の危険が高まります。
低い位置に荷物が配置される事で、安定性を向上させる事ができます!

 

Tizip により大きな開口部が開けられていると、撤収時の空気抜きの速さにも大きなメリットがあります。

パックラフトの大きな体積の中に入っている空気の量は膨大で、バルブから空気を全て抜き取るのはなかなかに手間がかかります。Tizip があれば空気抜きは一瞬です!
また内部を完全に乾かす事ができるのも利点で、対応年数の面から見ても加水分解の進行が少し遅くなるはずです。

Tizip が無くても、空気を入れてしばらく置いては抜くを繰り返せば良いのですが、手間は大きくなります。

 


こう聞くと、絶対に Tizip はあった方が良いと思いますが、一方でデメリットがあるのも理解しておきましょう。

Tizip はとても高額です。その上取り付けの為の工程も増えるので、製造コストに大きく反映されてしまいます。

重量面においても、ジッパーの重さ、機密性を保つ為に縫い目に施される接着剤の重さ、シームテープ剤の重さ、内部の荷物固定部施工の重さなどがあり、凡そ200gの重量増となります。
メンテナンスの面においても、定期的なグリスアップが必要です。ジッパー部分に砂などが付着すると故障の原因となるので、開閉時には注意が必要です。( 歯ブラシを持っておき、砂が付着した場合には可能な限り取り除きましょう。 )
中に硬いものを入れると、岩などと接触した際にチューブに穴が開く原因になります。クッカーやガス缶、水筒、テントポールなどの固いものは、クッション性の高いものに包む必要があります。

この様に、運用には少し気を使う部分があります。この為、1g でも軽量化したい " 雲水行脚 " や、砂噛み注意ができないお子様が使用する " 天真爛漫 " には採用しませんでした。

 

 

それでも Tizip を設ける事によって、荷物の収納スペースが小さいスポーツモデルの " 高山流水 " や、すでに空きスペースにクーラーボックスや自転車、時にはお子様や愛犬を乗せて使用する機会の多い " 山紫水明 " でも、内部ストレージがある事でオーバーナイトでの活動も可能になります。
Tizip 内部ストレージシステムは、パックラフトの可能性を大きく拡大させてくれる画期的な機構だと言えます。