安いパックラフトの問題点

 

パックラフトはブランドによってかなり金額差があります。

 

例えば中華ブランドの安いパックラフトは、5万円 ~ 8万円程度と安価に入手できます。

国産ブランドだと 10万円 ~ 20万円、アメリカやヨーロッパのブランドだと15万円 ~ 25万円程度と言ったところでしょうか?

 

実際に手に取ってみると、どのブランドの製品も同じ様な生地が使われていて、なぜこんなにも価格が異なるのかが分かりません。この記事ではその辺りを深掘りしてみようと思います。

 

 

 

⚪︎ 生産量による低価格化

 

安いパックラフトの一番の理由は、生産量です。
もうね、これが一番差が出ます!

とは言え、10艇とか100艇とか作ってもそこまで安くなりません。
はっきり生産コストを下げるには1000艇以上。できれば3000~5000艇くらいは作らないと安くなりません。

 

世界中のほぼすべてのパックラフトは中国の特定の地域の工場で作られています。

価格が安いパックラフトは、中国の工場が倒産した取引先の型をパクって自社生産しているか、もしくは大量生産して船便で輸送する事で低価格化を実現しているかのどちらかになります。

魔法で安くはなりません。
 

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前者の場合、パックラフトに精通した専門家が開発に携わっていない可能性や、各ブランドが責任を持って販売していない関係で、舟としての設計上に問題があったり、製品クオリティーに問題があったりします。


なので中華系の販売サイトで安いパックラフトを購入するのは危険かも?

もう一つの例として、大量生産する事で低価格化を実現しているケースもあります。
こちらに関してはちゃんと製品に精通した人が設計開発し、何度もトライ&エラーを繰り返して製品化されたものが多いと思います。


日本のブランドであれば、製品管理もちゃんと行なっているケースがほとんどで、購入時点で問題が発生するケースは稀でしょう。
ただ大量生産にもデメリットがあります。

 

パックラフトは一艇あたりの販売個数は多くても 200 ~ 500艇程度と言われています。
仮に 3000艇作って大幅なコストダウンを図った場合は、売り切るのに6年もの時間がかかる計算になります。

 

実は、パックラフトの寿命は使っていなくても減っていきます。

製造から時間が経ってるのは勿体無いかも?

 


パックラフトは生地にコーティングを施し、縫い合わせる際に接着剤で空気が漏れない様に目止めし、さらに強力なシームテープで完全に穴を塞ぎます。この構造により極めて丈夫なボートとなります。


ビニールを熱溶着しただけの、いわゆる " ゴムボート " との明らかなる差は生地と縫製にあります。

接着剤やシームテープ剤、生地のコーティングは有機系薬剤。つまり加水分解などにより経年劣化します。
一般にパックラフトは、使用しているもので5年から、未使用のもので10年程度の寿命とされています。
実際に使っていても清寧な管理をしていれば10年くらいは使えるものなのですが、逆に全く使っていなくても10年程度で接着面が悪くなると言う事でもあります。


つまり大量生産された製品は、購入時点で寿命が大きく減っている可能性があります。

海外の超大手ブランドですら数週間以上の製造期間を設けているケースが多いのはこの為です。
もちろんすぐに使いたい、3年も使えれば十分と言うならばそれでも良いとは思いますが、長く使いたいならば可能な限り保管期間が短かった製品を選ぶべきかと思います。

 

 

 

⚪︎ 送料と輸入関税による高額化

 

アルパカラフトやココペリなどの有名ブランドの製品は人気があり、メーカーもなかなか強気な売価設定をしています。それに加え、海外からの輸送コスト、そして輸入関税が乗ってきます。

特にアメリカ、EU圏からの輸入関税は高く、元の売価に大きく上乗せされた金額になります。

それを少しでも安く抑えようと、大手代理店が大量仕入れし、船便輸送することによって低価格化を目指したりしますが、小さな個人のお店よりかはマシにしても、やはり製品保管期間は生じます。
また海外ブランドは各地域のフィールドに合わせて研究開発されている関係で、日本の水辺にマッチしているかと言うと必ずしもそうとは言えないケースもあります。

⚪︎ 素材の品質による価格の差

 

素材の差による価格差があります。

例えば生地の場合、レイヤー数とコーティングによってかなりの価格差が生じます。

 

 一見すると分かりにくいのですが、コーティング剤によって岩角に対する対切創性や紫外線に対するダメージ、加水分解のスピードに差が生じます。当然、機能性が高い素材の方が高価です。
長く使いたいなら高品質なコーティングが施された生地の方が良いでしょう。

またレイヤーによる差も大きな金額差が生じます。
安い生地はナイロンにコーティングを施しただけの構造になっていますが、高い生地は内側に 吸水・拡散・速乾 素材のメッシュが貼られた3レイヤー構造となっています。

 

安い生地はコーティングのみで水分が結露して溜まりやすい。

 

高い生地はメッシュが吸水拡散させることで湿気を溜めない。

 


 5月~10月くらいのベストシーズンは大気温より水温の方が低い為、空気を入れても水で冷やされて萎みます。この為、一度膨らませてから水に浸け、萎んだらまた空気を補填してパンパンにしてから出艇させます。

では何が萎んでいるかと言うと、実は空気の分子ではなく水!
待機中に含まれる湿度が冷やされることで結露となって水に戻る為、空気中の水分が無くなる事によって体積が減ります。この水はチューブの内壁に水滴となって付着します。

この時、メッシュ生地になっているとその部分が水滴を吸い、メッシュ生地全体に薄く拡散。
水から出した時に素早く大気に戻るので水として内部に残りにくくなります。
帰宅後に再度膨らませてパックラフトを乾かしている間に内部の湿気も完全に乾きます。時に Tizip による開閉口が大きいパックラフトは、さらに湿気を抜きやすい構造であると言えます。

 

湿気が残ると何が問題かと言うと、カビ…。
内部に カビが発生すると接着面の寿命が著しく早まる ことになり、パックラフトの寿命が早く来てしまいます。

 

 

 

⚪︎ 機能による価格差

 

様々な機能が付帯されれば、それだけ価格も上がります。
シンプルなものは安く、高機能なものほど生産作業工程が増える事で価格が上がります。

例えばセルフベイラーを例に考えてみましょう。
何も穴が開いていないものは、チューブにボトム生地を貼り付けるだけなので簡単です。
セルフベイラーの穴を開けるとなると、その作業分の手間が発生します。
フラップがついて水の抵抗を減らす様な構造のものは、さらに手間がかかります。

では山童のロールトップ開閉式セルフベイラーはと言うと…。
ボトムに穴を開け、その穴のサイズに合う様にカットした生地を筒状に縫い、さらにその筒をボトム生地に縫い、縫い目の接合部は接着剤で防水コーキングした後、シームテープでさらに浸水対策を施します。
その上で縁にテープとプラスチックバックルを縫い付ける事で製品として完成します。

めっちゃ手間がかかるっ!!

 

穴を開けるだけなら簡単に作れる。

 

ロールトップ開閉式セルフベイラーは工程が大きく増える。

 


ロッカーを上げる、スターンの生地を増やす、シートをマジックテープ脱着式にする、ストラップテープにプラスチックバックルを取り付ける、バウトップに荷物固定用箇所を増やす、Tizip を取り付けて内部ストレージシステムを作る、スケグの取り付け箇所を増やすなど、機能を充実させればさせるだけ生産コストは高くなります。

 

 

 

⚪︎ 山童のパックラフトが少し高い理由

 

山童のパックラフトが少し高いのには理由があります。

受注を受けてから熟練の職人が一艇ずつ丁寧に縫い合わせてハンドメイドで作ります。
中国には、片田舎で生まれると貧富の差が激しく、生きていく為に幼少期からひたすら子供に裁縫技術を叩き込む地域があります。その経験の積み重ねは他では類を見ない技術力を生み出します。

この様な熟練の職人を使い捨てる事なく、経験に応じてしっかりと報酬を支払い、圧倒的な技術力を持つ工場が極一部存在します。この様な会社は当然高額であり、関税や送料を考えると日本で作るより高額かもしれません。
ただ、世界でも類を見ない圧倒的な技術は、ここにしかありません。
命を預ける舟の製造は、世界一の職人に任せたいと言う思いがあります。

 

さらに素材も最高品質のものを選んでいます。
強靭で耐久性の高いコーティングが施され、裏地には極めて吸水拡散性の高いメッシュが使用され、対応年数と耐候性の高い接着剤やテープ剤を使用しています。
バルブひとつとっても可能な限り開け閉めしやすいものを選択し、防水ジッパーも中国製の安物ではなく、信頼と実績のあるドイツのタイテックス社が誇る Tizip を採用するなど、徹底的にこだわっています。

またパックラフトをより使いやすくする為の独自の機構を、何度もトライ&エラーを繰り返しながら創意工夫し、工場に頼み込んでゼロベースで作ってもらっています。

受注生産により一艇ずつ製造依頼しているので、工場のラインで一気に大量生産、大量輸送、長期保管を行う製品よりもどうしても高くなってしまいます。

 

 

まぁなので、安いのが欲しい方は山童のパックラフトは向きません。
違うブランドの製品を選択頂いた方が安価に手に入ります。

購入したパックラフトを可能な限り長く使いたい。
クラフトマンシップを味わいたい。
最高品質、最高性能のパックラフトに乗りたい。

そんなワンランク上の高品質を求める方にこそ選んで頂きたい!
妥協なくこだわり抜いた製品が、山童のパックラフトです。


とは言え、めっちゃ頑張って安くはしてます。
ぶっちゃけ、大手代理店の製品を卸してもらって小売りした方が粗利が取れるくらい、自社製品なのに信じられないくらい薄利でやらさせて頂いております。だって、これ以上値段高くなったら、自分ならたぶん買わないもん。
それでも妥協したくないから仕方ない。

手前味噌ですが、これまでたくさんのブランドの製品を実際に買って使ってきていますが、どこよりも良いパックラフトを作っている自信があります!!
本当に高性能なパックラフトが欲しい方には自信を持ってお勧めします!!

是非、山童パックラフトをお求めくださいw