チューブ径と剛性について

 

山童では他ブランドのパックラフトよりやや太めのチューブを採用しています。

例えば一般的にホワイトウォーター向けのパックラフトでは一般的に28cm程度のチューブ径を採用しているケースが多い様です。超軽量モデルでは25cm程度が多いでしょうか。

チューブ径が太くなることのデメリットもあり、僅かに重量が重くなったり(4-6%程度)、僅かに漕ぎにくくなる傾向があります。何よりパックラフトは生地が高性能な為にものすごく高価で、チューブが太くなることで製造原価が高くなります。
この為、剛性が保てるギリギリまで細くする傾向があります。見た目にもスマートです。

 

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ではなぜ山童では太いチューブを採用するのか?
それは " 剛性 " です。

山童ではパックラフトの剛性について特に重要視して考えております。
ただ闇雲に高剛性化を進めると、収納サイズや重量にも大きく影響が出ます。そこを追求するならカヤックやダッキーなどを選択した方がずっと剛性が高くなります。軽量コンパクト性は犠牲にできません。

 


一般的に高剛性化を行う為に、生地を厚くします。210D から 420D に生地を厚くする事で、空気圧を 1psi から 1.5psi まで高められる様になります。実際これにより、パックラフトの剛性は50%上がります。
山童の場合は高強度な生地を選択する事で、210D の生地でも 1.2psi まで耐えられるものを使用しています。1.5psi との剛性さは 25% となります。

一方で生地厚が厚くなる事で、重量は凡そ1.5倍重くなります。例えば高山流水の場合、船体重量は2.8kgなので、生地を チューブ420D / ボトム840D にした場合には、4.2kg の重量になります。これは大きな差です。

 

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ではチューブ径を 28cm から 30cm に大きくした場合はどうでしょう?
重量増加率は 6% 程度で、剛性は31.8%の上昇が認められました。高品質な生地により 1.2psi まで耐えられる様になったことも併せ、僅か160g の重量増加で51.8%の強度アップに成功しています。

これにより、ホワイトウォーターに求められる強度を保ちつつ、圧倒的軽量コンパクト性を実現しました!

 


特に " 高山流水 " の場合は一般的なホワイトウォーターモデルのパックラフトより短い為、剛性面、重量面でより有利です。(他のモデルも、同系統の他社モデルより太いチューブ設計にしています。)
これは源流域のクリークをスムーズに下る為の設計によるものですが、一般的なホワイトウォーターモデルが255cm前後の大きさを選択するケースが多いのに対し、高山流水は230cm。
この事による縦方向の剛性は、計算上36.3%上昇する事になります。

つまり210D生地を採用するチューブ径28cm、全長255cmのホワイトウォーター向けパックラフトに比べ、実に88.1%も剛性を高めることができています。
源流域の滝から落ちる事も考えた上での剛性ではありますが、極めて高い剛性であることがわかります。

 

 

剛性を高めることで、① 安定性の向上、② 航行性能の向上、③ 旋回性能の向上 の3つのメリットがあります。

波などでパックラフトの形状が変形してしまうと、パックラフトの安定感は大きく失われます。

剛性は高ければ高いほどパックラフトは安定します。

形が歪まないことで水の抵抗が減ります。
海や湖で漕ぐ際にパックラフトの生地が歪むと、当然その分抵抗が大きく増えます。より歪みにくい事により、パックラフトはよりスムーズに進み、長距離クルージングでの疲労感が大きく軽減します。

ダウンリバーで素早い旋回が求められる時も、抵抗が減った分、よりスムーズに旋回ができる様になります。

つまり、パックラフトの剛性を高めることで舟としてのあらゆる性能が向上する事になります。
他ブランドが生地を厚くする事で実現している高剛性化を、山童ではチューブ径と生地の品質によって実現しています。

 

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またチューブ径が太くなる事で、パックラフトの全幅が広くなります。
これにより横方向の安定性が極めて高くなり、転覆率が極端に低下します。その安定性は流れる川の上でパックラフトの上に立てるほど。(凡そ60%の一時安定性の向上。)
全体的な高剛性化にも伴い、安定性の高さは他に類を見ないほど。安全性と安心感に繋がります。

この圧倒的安定感こそ、山童のどこにも負けない最大の強みだと考えています!

 


もちろんチューブが太くなる事により、僅かに重量や収納サイズが増す、パドリングが僅かにやりにくくなるなどのデメリットが無い訳ではありません。
しかしそれ以上にとても大きなメリットが、チューブの大口径かにあると山童では考えています。